脾の蔵象学 (蔵象=西洋学で言うところの生理学)
脾胃は表裏の関係で
脾が蔵で陰です。胃が府で陽になります。
☑脾は気血を作り出す
脾には「意・智」といわれる先天の気(両親から引き継いだもの)があります。
これに、後天の気(脾、胃により飲食物を消化吸収して得られる)が合わさって 脾気(ひき) となります。
脾気は、胃・大腸・小腸などを働かせて 気血 を作り体の各方面へ送ります。
そして、脾そのものも養います
☑脾は陰中の至陰だと言われています。
肝のように猛々しい性質ではなく、肺のように気を巡らせたりはしませんし、心(しん)のように常に活動的でもありません。
また、腎のように心包の相火(しんぽうのそうか)を欲しがったりはしません。
静かに思いを巡らす哲学者のように、意を以て気血津液を生成しているのです。
これを人間の感情に置き換えると 「思う」 と言うことになります。
☑脾と胃。
胃で作られた津液は脾が巡らします。ですが、脾は 腎の蔵している津液 がないと脾は働けません。
腎は、各臓の持っている 先天の気の元締め なので腎がしっかりしていないと脾は働けません。
逆に 脾が栄養を送らないと 腎は弱って働けなくなります。
この関係を脾腎の相克関係といいます
また胃には陽気がありますが、これは、心包から来た相火 です
腎から来た津液 + 心包から来た相火 によって気血津液が生成できるのです
六腑全ては胃に関連して気血生成に関わっています。
ですので、全て府(大腸、小腸、胆、膀胱、三焦) は脾の支配下に属しているといえるのです。
実際の治療でも 脾が弱ることで これらの府に病が表れていることがあります。
脾→胃→大腸(大便を排泄)
→小腸(小便を膀胱へ送る)
→胆(臓腑の中性を保つ)
→膀胱(小便の排泄)
→三焦(気を巡らす)
脾には、陽気がありません。
ですので、何らかの病で熱が脾に入ると死亡してしまいます。
通常は脾の気が、胃に熱を返します
脾の支配部位は、肌肉(きにく)、唇、口、四肢
古典では脾胃のことを『倉廩(そうりん=米倉のこと)の官』といい、血を作り出す元になっていると言っています。
作り出された血は、脾胃はもちろんのこと、臓腑や筋骨、肌肉、皮毛といった形あるもののを実質を補います。
体を作るとも言い換えられます。
血が不足すると体が痩せてきます。特に以下のような部位に症状があらわれてきます。
☑肌肉(きにく)
全身の運動を司る組織の1つで、脾の運化機能により営養される
今で言うところの脂肪層で、血がすくなると、
初めに肌肉が痩せていきます。
シワが多くなり、肌に光沢がなくなります。
体質として肌肉の柔らかい人は、脾が弱いです。
人体は肌肉でできているところが多いです。例えば臓腑も肌肉でできています。
肌肉は津液や血を必要とするので、津液や血を生成している 脾 が弱ると肉が落ちてきたりぶよぶよと
締まりのない状態になるのです。
慢性疾患の内蔵機能が落ちている人も 脾 が弱っていて津液や血が不足しているので、臓腑が痩せていてます。
☑口、唇
唇は肌肉でできています。唇に血がなくなると白っぽくなります。
逆に熱証だと赤くなります。
また唇の大きい人は、体質として 脾虚熱証 になりやすく、小さい人は 脾虚寒証 になりやすいです。
また口内炎などの 口の異常 も脾虚のことが多いです。
☑四肢
四肢には肌肉が多い。そのために
四肢の倦怠感 や 痩せていたり すれば脾虚とします。
逆に気血の生成が盛んであれば四肢は充実しているし、同じ脾虚でも 胃に熱が多い人は四肢に力があります。
☑意・智
血がすくなると、意・智の気が働かなくなります。
これにより記憶力が減退して、考えがまとまらなくなります。
ひどくなるとあちこちから出血することがあります。
・血の混じった小便が出る
・急に鼻血が出る
などの症状は脾の弱りがあるからです。
脾と甘味
甘味には緩める作用があります。これは
☑固まったものを緩める。
☑緊張を緩める。
☑ひからびたものを潤す
などの作用になります。
これは言い換えると、気血津液を多くして体各部を潤すと言う意味です。
この作用には血や津液が必要です。血や津液は、脾の命令で胃腸にて生成されます。この脾を補うのです。
補うことで気血津液の生成を促します。
例えば、肉体労働をして疲れたときなどに 甘味をとり 気血津液の生成を促し 疲れた体を潤します。
また甘味のモノはまず 肌肉 を栄養します。
そのために肌肉に力がない子供などは、動物性のタンパク質食べさせるよりも穀味などの甘味のあるものを摂らせると良いのです。
ですが、摂りすぎると その緩める作用から 体がだるくなります
また腎の固める作用を弱めるので 太ってしまいます。腎の弱っている人は甘味のモノを摂りすぎてはいけません
例えば、糖尿病は腎虚証で治療します
甘味の食べ物には
☑サツマイモ
☑米
☑ジャガイモ
☑カボチャ
☑蜂蜜
☑ごま
☑大豆製品
☑きな粉
☑トウモロコシ
☑牛肉
☑豚肉
☑鶏肉
☑羊肉
☑コイ
☑あゆ
☑ふな
☑鯛
☑アジ
☑エビ
☑ウニ
☑カキ
☑やまいも
☑ユリ根
☑ウリ
☑タケノコ
☑なす
☑とうがん
☑セリ
☑トマト
☑オクラ
☑キャベツ
☑大根
☑シイタケ
☑なつめ
☑柿
☑いちじく
☑なし
☑スイカ
☑パイナップル
☑バナナ
☑ヤマモモ
・・・などがあります。
脾胃で作り出される気には、宗気、陰気(営気)、陽気(衛気)の三つがあります。(=三者を『後天の気』という)
宗気・・・飲食物から生成された精と、吸入した空気が合してできたもの。
上焦(胸)に昇って呼吸作用の原動力となります。
陽気・・・衛気(えき)ともいい、体表を保護し外邪の侵入を防ぐ気となります。
胃を働かす力にもなります。
胃の陽気が不足すれば、消化力も落ちてしまいます。
胃から肺へ行き、肺の力によって全身へ送られます。
熱性(陽性)で活発的なので、胃から直接体表へ出て汗を出すこともあります。暖かいモノをたべると汗が出る
のはこのためです。
ですが、通常は経絡の流れに沿って全身を巡ります。
昼間や夏は、陽経脈に多く集まり発汗作用を促し、夜間は陰経脈に多くなって体を温めます。
陰気・・・営気(えいき)ともいい、血を全身に流す力があります。
心気のことであり、血を集める肝気のことでもあります。
『心気はものを固める作用があります。浮き上がるものを引き締める作用ともいえます。この力で休みなく動く心の
熱が多くなりすぎないようにします。また肝を助けて血を全身に送ります。
血がさらさらなのもこの引きしめる作用で熱を押さえているからです。 』
脾と四時《春・夏・秋・冬の四季》
☑脾は土曜に活発に働きます。土用は各季節にあります。
土用を四季といい。春夏秋冬を四時といいます。
四時には、それに関係する臓器が活発に働きます。
春=肝・・・肝気が働いて、血を収斂(しゅうれん)します
夏=心・・・心熱が旺盛になって大いに成長すると同時に、勝因の起臥働いて心熱を制御します
秋=肺・・・皮毛を引き締めます
冬=腎・・・腎が津液を蔵し、同時に津液が多くなりすぎないように 命門の陽気(相火) が働きます
しかしこれらが働けるのは脾胃で生成された気血津液のおかげです。
ですので、四時《春・夏・秋・冬の四季》に四蔵《肺・肝・心・腎》が働いた後は、脾が頑張って
気血津液を生成して四蔵に分配するのです。
このような働きから 脾は中央に位置する とも言われます。
脾胃の症状(*脾胃だけに限った症状でないものもあります。)
☑関節炎
☑リウマチ
☑躁病
☑鬱病
☑くよくよ悩む
☑全身の倦怠感、
☑胃痛
☑鼻血
☑便通の不調
☑腰痛
☑頭痛
☑膝の内側の痛み
☑歯の痛み
☑口内炎、口唇炎
☑不眠
☑顔面神経マヒ
☑食欲不振
☑食欲の異常亢進
・・・などなど他にも 脾、胃 にアプローチしていくことで改善、完治していく病がいくつもあります。