あき鍼灸院 ブログ

蔵象学(生理学) 心について



 心の蔵象学 (蔵象=西洋学で言うところの生理学)
 
 
・人体の五臓六腑【五臓(肝・心・脾・肺・腎)と六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)のこと】、生命機能、活動の統括するところところです。
 
・一切の精神意識思惟は、すべて心に統括されている。ですので、『君主の官』といわれています

・心は五臓六腑を統括する役目を持ち、臓腑が分業して、互いに強調して、全体の活動機能を発揮できるように統一指導できる



 
 心は陽中之陽

陽中の陽といわれ 陽気が多い。

心の陽気は、両親からもらった先天的なものです。これと胃の陽気(後天的に造られもの=飲食物をとることで造られる)が混じり合って、人は活動します。

常に活動的だから夏の気(1日の中では日中)と通じて、夏によく働きます。
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【理由】
夏は万物が栄えるとき、つまり陽気が旺盛になります。

人体でも陽気が盛んになって、適度に陽気を『発散』させる必要があります。

陽気を発散させないと、外からの熱の影響で五臓六腑が、熱を受けて働きが悪くなってしまいます。


●汗をかく
心の陽気は、血脈によって全身に送られます。
この血脈は皮毛のすぐ内側を巡っているので、心が活動して、陽気を含んだ血が循環し出すと汗が出やすくなります。ですので、汗は血の変化したもの(心液)だとも言えます。
汗を大量に出しすぎて造血が追いつかないと血が少なくなってしまいます。

まとめると→汗を出すことで陽気を発散して、夏の暑さに負けないようにしているのです。


ですが、心へ作用する『苦み』は、『陽気を発散する』作用とは逆の働きになっています。なぜでしょうか?

 心は苦み(にがみ)を欲しがります
 
・苦みは心に作用します。

・苦みのものは『固める』作用があります。この作用は、酸味の収斂作用(しゅうれんさよう=肝の気に作用する)よりも進んだ作用で、『鎮静』『抑制』の作用があります

 ですが心の陽気を『発散』する作用とは、逆になります。

「※蔵象学では、気と蔵の働きを分けて考えないと矛盾が出てきます。これは心にも当てはまることで   す。
 心を気と蔵に分解すると、心の気は『鎮静作用』、心の蔵は『発散作用』となります。」

・心は陽気の多い蔵であるために、陽気が多くなりすぎると、心熱の病になってしまいます。ですので、 心の気が作用して、心の蔵に熱が多くなりすぎないように『鎮静』しているのです。この心気を補い助 けるのが苦みの役割ということです。

・また、この『苦み』は、腎にも作用して補っています。
 腎は水の多い蔵です。発散させず。堅く。静かで熱が少ないのが良いのです。ですので、心の気に作用する苦みは腎の蔵(腎の気ではありません。)にも作用していると言えるのです。そして腎が補われて水(津液=しんえき)が多くなれば、この水によって心の熱が多くなることを防ぐ役割にもなるのです。
 
 
 舌、色、脈などに関係があります
 
●心の状態は舌に現れます
 ・心に熱が多ければ舌が赤くなります(心気が少なく熱を『鎮静』できていない状態)→ 熱が多くなると   食べ物の味もわかりにくくなります。熱が脾胃にも多くなり、過食、舌炎、口内炎、舌の乾燥、舌に苔  ができるなどの状態が現れます。
 ・また診断するときに舌を診ます。この時上手に舌が出せない方がいます。これは心の陽気が少なく  なっているからです。他にも思うように舌を動かせないなどの症状が現れます。

●顔色に心の状態が現れます
 ・顔面が赤くテカテカと光沢があり過ぎる状態は→心に熱が多すぎます。
 ・逆に顔色が悪く、白くなったり青くなったりするようなときは状態が悪いです。→陽気がない。=神が                                                            ない。

●脈を支配する
 ・『心の合は脈なり、心は血脈の気を蔵す』と素問の五臓生成論や平人気象論という書物に記されています。この脈や血脈とは、経脈のことです。
経脈とは→全身に『気』『血』を循環させています。その原動力は陽気であります。ですので、陽気の多い心の支配されているというのであります。

 
 

 心の性質(心は神を蔵して、喜ぶ感情を生み出します。また他の精神活動を支配します)

心の陽気=血と気が合わさったもの=神

心は前述でもあるとおり『君主の官』といわれます。ですので、心自体の陽気は『君火(くんか)』といわれています。

そして、外に出て働く陽気を『相火(そうか)』といわれいます。相火は『心包』と言われる経絡を通じて外に出て臓腑に働きかけます。


別の言い方をすると心の陽気(君火)が、腎に下ってきて命門の火(相火)となります。腎に陽気が降りてくる腎の陰気が上がっていく交流がないと、陰気だけが下にたまって体の下は冷えるし、臓器も働けなくなります。また上に陽気がとどまってしまって、のぼせた状態となり肩こりや耳鳴り、めまいなどの病を生み出す原因となります。

 心と小腸の関係

・心と小腸は表裏の関係です。

・治療上(臨床上)では、大腸と含めて胃とひっくるめます。

小腸は『太陽経』といわれる経絡に属しています。膀胱もこの経絡に属しています。
小便を排泄する作用に関係があります。小便が出るためには、太陽経を下ってくる気が旺盛でなければなりません。その気とは=心の陽気です。(この時の陽気は、相火です)

・飲んだ水分は、胃から小腸へ行き、膀胱から小便となって排泄されます。これらを働かせているのは、『脾』です。

太陽経の気の循環が悪くて、小便の出が悪いときに、外から更にストレスを受けるとリウマチや関節炎になりやすい。このような時は、心の陽気(相火=心包経の陽気)を補うことで、太陽経の陽気を盛んにすると小便が出やすくなります。

※心の陽気(君火)は生まれたときから持っている『先天の気』です。これを増やすことはできません。病を治療するうえで陽気を補うには、自分で造ることができる『後天の気』を増やすことで解決できるのです。

この後天の気は、飲食物をとることで造られものです。後天の気は胃から飲食物を気血に変えて取り込む必要があります。ですので、気血を生成している脾を補う必要が出てくるのです。脾は、胃の働きにも作用します。 そこで、心包(相火)と脾を補うことで、小便が出にくいなどの症状が改善されます。



 心に虚なし
心の病は実際の治療では、心そのものを補う治療でなく、他の蔵が心の陽気を不足して病を発症するものとして治療を進めていきます。

前述の脾を補ったり肝を補ったりなどです。

心そのものの陽気(君火)が不足する=滅ぶ寸前の重篤な状態ですので、診断の際に重篤な状態でなければ、心そのものが弱っている状態(心虚)とはしません。

日常での治療の中では、重篤で危ない方を診ることはそうありません。ですので、自走していらっしゃる患者さんには、心のそのものの陽気(君火)不足はありませんが、心に熱が多くなりすぎる病は普段の臨床の中でよくあります。
これは、心の気が不足して心の熱を鎮静させることができなくなっていたり、腎が弱って水が不足して、熱を防ぐことができなくなっているために起こってくることです。ですので、治療としては『腎』を補う治療をしていくことになります。

腎の弱りは、年齢を重ねるごとに出てきます。ですので、顔がほてったりするようなことは心の陽気を収めることができなくて起こっていることとも言えます。




 
 心の症状(*心だけに限った症状でないものもあります。)
胸の痛み。胸の苦しさ。脇の痛み。脇下の痛み。手のひらが熱っぽい。

口渇《こうかつ=喉が渇いて湯水を飲みたがること》 

舌炎。口内炎。口唇炎。

食欲がありすぎる。

しゃっくり。よく笑いすぎる。言語障害。顔面とくに眉間が赤い。

難聴。首がこって動かすことが辛い。肩が抜けるように痛む。

高血圧など血圧の以上。不整脈。動悸。

胸や喉が詰まった感じがして苦しい



 
 
 ・・・などなど他にも心にアプローチしていくことで改善、完治していく病がいくつもあります。